この日記はMozillaのプロダクトへの貢献者としての私の成果を中心に、気になったバグやWeb界隈の話題について書いていますが、 断り書きがある場合を除き、いかなる団体のオフィシャルな見解ではありません。あくまでも個人的なものです。 Mozilla Foundation、Mozilla Corporation、Mozilla Japan、及び関連企業の公式情報ではないことに注意してください。

もずはっく日記(2008年6月)

2008年6月23日

一連の件でのエンドユーザの方へのお詫び
初回投稿日時: 2008年06月23日06時48分52秒
最終更新日時: 2008年06月23日07時25分13秒
カテゴリ: 雑談
SNS: (list)

Mac版のFlashでIMEが使えない、という問題についての騒動で、私の書いたコメントで『エンドユーザ』の方に不快な思いをされた方もいらっしゃると思います。そのようなエンドユーザの方にはお詫びします。すみませんでした。

また、私の書いた内容は主に事の発端となったエントリに対する批判と、開発コミュニティに入ってこようとするユーザの方をターゲットとしたものでした。つまり、エンドユーザの方がこの日記を読むこと自体が私の想定外だったので書き方が非常にまずかったです。そして最初のエントリを非常に感情的に書いてしまったために、私の考える問題点を明確にできないまま変な騒動に発展してしまいました。申し訳ありません。

私が問題としたかったのは下記の三点でした。

  • 問題の発端となったブログのエントリが誤解に基づいて書かれている
  • 善意で開発してくれている開発者に対して無礼を招きかねない内容だった
  • 開発コミュニティに開発者であるという自覚のない、普通のユーザを誘導しようとしている

そして今回の騒動ではっきりと実感しましたが、三番目の問題が一番の深刻なようです。

あらためて書かせてもらいます。私はユーザがユーザの枠に居る限り、プロダクトを批判することについては何の問題も無いと考えています(話題の根拠や、内容が正確であるという前提はあります)。むしろ、そういった意見は出るべきです。

ですが、ユーザが、開発者の立場で行うべきことをユーザの立場のつもりのままで行った場合にはこの限りではないと考えています。だから私は開発者コミュニティの一参加者として開発者であるべき方々に対してメッセージを発信しました(この部分がエンドユーザの方に対する批判や責任の押しつけであると採られたことは非常に残念でした)。そこで、少しでも不快感を与えてしまった方に理解してもらうには、Bugzillaの存在を理解してもらう必要があると考え、このエントリを書くことを決めました。


MozillaはBugzilla上で開発を行っています。Bugzillaでは開発に関するディスカッション等まで公開されています。そしてここにはある意味では自由に開発に参加することができます。これは例えるならMozillaの開発者達が働いているオフィスに、Mozillaの関係者以外も入って来て、プロダクトの開発に参加できるようにしている状態です。つまり、開発者になりたければ、Mozillaに就職しなくても参加できるということです。これがオープンソースの良い所だと思います。ソースが公開されているところに意義があるのではなく、開発体制自体がオープンなところに意義があるのです。そう、つまり、開発者のオフィスをユーザが引っかき回すことができるように公開されている訳ではありませんし、またそれは許されるものでもありません。

ですが、このシステムを誤解している方の多くはユーザとして開発コミュニティに参加しようとします。例えばバグを報告する場合に、報告したらしっぱなし、スタッフからの確認や問い合わせにも応じない、という開発者からすると非常識な行動をとります。また、こういったユーザの行動に対して『ユーザに手間をかけさせるのはおかしい』という意見が出たりします。ですが、その意見は開発者側から言わせてもらえば、『自分はユーザなのだから開発者はユーザの希望を聞くべきだ』という一方的な意見に聞こえます。このような方は開発現場をユーザサポートの場だと考えているのではないかと思います。

開発者のコミュニティでは開発作業を行うために人が集まっています。ユーザをサポートするためではありません。一方はユーザはサポートされるべきだと考え、もう一方はユーザをサポートするために参加しているのではないと考えている訳です。これで話がかみ合う訳はありません。

このような状態では、Bugzillaを理解せずに入ってきた、『クレーマー』と化したユーザがBugzilla上で誤った行動を起こし、それが原因で日本以外の開発者の方に不快感を与えるかもしれない、それが私が最初に懸念したことでした。そして、これを誘発する安易な内容を私は許せませんでした。

今回説明したような、ユーザコミュニティと開発者コミュニティの違いをコミュニティの分裂だと悲観する意見を聞いたことがあります。しかし、私はそうは思いません。これらは分離しているべきだと考えています。現在のコミュニティ全体の体制に問題があるとすれば、これらのコミュニティをつないでいるものがあまり無い点です。だから、私は開発コミュニティに情報をフィードバックする新たなコミュニティを提案し、その概要についても私見を書きました

Bugzillaがなぜ開発者のためのコミュニティであって、ユーザのためのものではないのか、それは開発者には必要なもので、開発者のために作られ、開発者が中心となって、開発するために運営が続けられているものだからです。決してユーザとのコミュニケーションのために運営されている訳ではありません。ユーザが、その気になれば開発者として活動できるのを容易にするために公開されているのだということを理解していただけるようにお願いします。


最後にvoteについて解説を追記しておきます。

以前も説明したようにvote数は開発現場での一判断材料であり、決断を覆せるようなものではありません。これは事実です。

ですが、ユーザがユーザとしてBugzilla上でとれる数少ない行動のうちの一つであることも事実です。数少ない行動なのに発言力が低い、という不満も理解できますが、開発者の立場に立ってもらえれれば、何故そうなのかを簡単に理解してもらえると思います。その理由については、開発者も好き好んでバグを放置している訳ではないとだけ書いておきます。

voteを適切に利用されるなら是非行ってください。ただし、注意して頂きたいのは、voteするバグの選択は本当にそのバグで困っている場合に利用するべきだということです。一刻も早く修正してくれなくては困る、という方はvoteしてください。

逆に言えば、今回の問題の発端のように変なナショナリズムを元にした、本来の目的とは異なる形での利用はしないでください。そのようなことをすれば、voteはますます信頼できない判断材料と化すのみです。Mac版Fx3のユーザで、このバグで本当に困っている方以外のvoteを私は適切だとは思いません。そのような票が非常に多いのであれば、voteは今以上に信頼できない数値になります。それはユーザ自身がユーザとしての意志の表明機会を失うだけのものになってしまいます。

また、くれぐれもテスト結果等のフィードバックではないコメントは書かないでください。お願いします。

関連するかもしれないエントリ

関連するかもしれないエントリを発見できませんでしたが、無いとは限りません。

Twitter

Masayuki Nakano(問い合わせ先)